これは俺の友達の話なのだが
高校の頃「お前音楽どんなの聴いてんの?」という話を
ふっかけられた奴がいた。
仮に話を振ってきた方をM君。振られた方をO君と呼ぶ。
O君はその時流行ってたJPOPをいくつか挙げていったが、
M君はそれを聞くとフフンと鼻で笑って
「ふーんそんなもん聞いてんだお前?俺は洋楽とかクラシック聞いてるけど(ニチャア)」
話の出だしから気に入らなかったがイラッとした。
ようするにO君が何を聞いているかには最初から興味がなく、M君は自分が洋楽やクラシックを聴いてることをアピールしたかったのだ。
同時に嘘だとも直感した。
洋楽やクラシックを聴いてるのが嘘だというのではない。
こいつが洋楽やクラシックを好きで聴いてるはずがないと思ったのだ。
思うに学校のクラスというのは大きく3つに分類される。
まず野球部やサッカー部のイケてる人達で構成されたAグループ。
そして良くも悪くも普通。今一つジャンプできない人達のBグループ。
最後にジャンプする気もない、教室の隅で暗黒物質を放射するCグループ。
O君はCグループのリーダー的存在でM君はその片腕的存在だった。
(この場合のリーダーと片腕は決していい意味ではなく、暗黒物質のワンツーフィニッシュを指す)
その暗黒物質の頂点としての勘がO君に真実を看破させた。
「こいつファッションや人にマウントとるために音楽聴いてやがるな!!!」
その後もM君のエアロスミスやらなんやらジョジョのスタンドみたいなバンドの話が続いたが、最後にM君はこう切り出した。
「お前もいつまでもそんなもん聴いてないで洋楽聞けよ。貸してやるから!」
O君は「ああん!?」と思ったが素直にCDを受け取った。
家帰って聴いてみる。
正直言葉がわからないので何を言ってるのかわからない。
JPOPのようなわかりやすいサビがあるようにも感じられず
「え!?今のとこサビだった!?」と思うことが多かった。O君は。
だが次の日M君に「どうだった?」と聞かれたO君は
「スゲーよかった!!!洋楽最高だわ!!!」
と答えてしまった。
洋楽を聴くものが上位の存在、理解できない奴は負け組という
その場の空気がO君を曲げた。
それからO君とM君は同じグループの他の子達に
「君たち・・・音楽は何を聴いているのかね・・・?(ニチャア)」
と感染者を増やしにいった。バイオハザードである。
さてここからが本題だが高尚な趣味とはなんだろうか?
不思議な話だがただ好きでやってるはずの「趣味」にも上下がある(ように
感じられる)時がある。
漫画読むより小説読むほうが偉い。
邦楽聞くより洋楽聞く方がかっこいい。
アニメ見るより映画見た方が高尚だ。
ゲームするよりスポーツやるほうが素晴らしい。
そういう風に感じてしまったことはないだろうか?
心からそれが好きで選ぶなら趣味だが、
人からどう思われたいかで選ぶならそれはファッションであろう。
とはいえ同時にこうも思うのだ。
「誰かにこう思われたい。あるいは誰かに近づきたい」
というためにやるならそれはそれで本心で尊重すべきものなのでは、とも。
ファッションだとしても世間に近づく擬態としては便利である、高尚な趣味。
というわけで最近の俺はそのふたつの考えの間で揺れ動いている。
正直に自分の好きなものばっかりやってるのが正しいか。
擬態や勉強、誰かとの世間話のためにそんなに興味ないことにも手を伸ばすべきか。
どっちもよりマシな人間になりたいという思いだけは共通である。
(終わり)