お隣ブログ

日々の駄文です。

憧れの締め切り

どうもお久しぶりです。お隣です。

久々すぎて「あれ?こいつそもそもなんの人だっけ・・・?」

と思われる方も多いと思うが、そこらへんは俺にももはやわからないので容赦してほしい。

それほどの時(半年)が過ぎたがどうか思い出してくれ。

漫画と絵をアップしてみんなを笑顔にすることを目指した親切でアットホームなアカウントなのである。

 

「じゃあお前半年間何やってたんだよこのイボゲルゲ!」と思われるだろうが、

俺がこの半年何やってたかというとやはり漫画を描いていたのである。

 

半年ほど前にとあるお企業様から「これこれこういう原案で漫画を描いていただけませんか?」というDMをいただいた。

 

俺は舞った。

常日頃、周りのプロ連中から

「そろそろ締め切りがヤバくて・・・」

とか

「ちょっと今日は仕事が修羅場だからゲーム無理!」

みたいな会話を聞くたびに「いいなー!かっこいいなー!」と思っていたので、

これで俺も

「締め切りきつくてつれーわー!二時間しか寝てねー!つれー!」

地獄のミサワみたいな会話ができるチャンスだと思ったのだ。

 

だがやってみてわかったのだが、締め切りの辛さというものは俺が思っていたのと全く別方向にあった。

 

打ち合わせが終わり、キャラデザも終わり、ネームもOKが通った(実はこの時点での締め切りも3週間超過したのだが)

 

さあいざ作業!という段階になって提示された条件は詳細はボカすが、ざっと2か月で30何ページといった具合である。

 

さあ憧れの「締め切り」が設定された!これが憧れの締め切りだ!神様ありがとう!

 

2か月、つまり60日で30何ページということはつまりざっと1日半ページちょい描いてれば終わるという計算だ。俺はその計算に満足し2~3日ゲームをして過ごした。

余談だが何かやるべきことがある時のゲームは最高に楽しい。

 

さて3日も遊び惚けてしまった。そろそろやらなきゃね!とついに原稿に向かう。

1ページ目描き終わって呆然とした。

また3日たってる。

 

ゆるりと恐怖がわいてきた。

 

俺は絵が下手である。

しかし下手だからこそせめて手は抜かないように心がけてきた。

「ああーこいつ絵下手だな。けどこいつなりに全力で描いてるな」

というのは読み手に伝わる、伝わるものだと信じている。

 

だが、作業を始めてすぐに気づく。

 

このペースでは終わらない。

 

正確には俺が全力で絵を入れるペースでは、このスケジュールで完成しない。

終わらせるには絵を「手抜き」しなければならない。

矛盾しているようだが「全力で手抜きしながら描かなければ終わらない」という

状況になった。

 

これが漫画に限らず、ゲームだろうが部品だろうが「締め切り」というものがある辛さだろう。

思うにお金を貰うということはどっか自分を売り渡すということだ。

納得がいってなかろうが、納期が来たらでっちあげてでも納めなければならない。

これは創作に生きる人には耐えがたいストレスではないだろうか。

 

下手なうえにどんどん雑になっていく絵を見るたびにだんだん作業に向かうのが怖くなる。

「どうせもうまともな形での提出など不可能なのだ」という諦めがどんどん心を支配していく。

こうなるともう日々がただただ後ろめたい。

何をしてるわけでもなくても申し訳ない気持ちになり、

好きだったゲーム配信もやらなくなり、ツイートもだんだん減っていった。

そんなことしてたら、もし先方の会社が京都だった場合

「はわわ~こりゃとんだ大作家先生様にご依頼してしまったもんどすわぁ~」

と思われてしまっていたことだろう。

 

誤解のないように言っておくが、先方の企業様からは何も圧をかけてくるようなことはなかった。

むしろ俺が初めてだったのもあってすごく優しくしてもらえた(いやらしい意味ではない)

 

それだけに申し訳なく、遅々として進まない割に荒れ果てた原稿を見てどんどん手が動かなくなる悪循環。

気がつけば残り20ページであと10日みたいな状況なのに、

「1日2ページちょい仕上げれば終わるじゃん!いけるいける!」

みたいな気の狂ったスケジュールを計算し始めていた。

いけるわけないのである。

そんなのは

「わたしあと2か月で20キロやせる!ウフッ」

とか破綻したダイエット計画練ってるようなもので、もはやただの空想。

夢物語である。

 

そんなこんなで当初定められた締め切りを超過すること2度、

ついに先方から「あと半月で・・・」というお達しがきた。最後通告である。

 

それでようやく俺も腹が決まったのか

「お金をもらった以上はどんなにボロボロでもこれだけは納めなければならない」という心持ちになってくれた。

そんなこんなでようやく納品したのが先日である。

ズッタボロのケチョンケチョンであった。

 

というわけで憧れに締め切りに追われる日々は終わり、俺は日常に帰ってきた。

「俺はやりきったのだ!」という達成感はないが、数多くの学びの場を与えてくれた

依頼主の会社様には感謝しかない。

 

しばらくはまたお金ももらわず締め切りもないツイッタラーお絵描きマンに戻るが、

この日々はこの日々で贅沢なのではなかろうか。

 

お隣大作家先生様の次回作にご期待ください。

 

(終わり)